今週読んだ本【2025年8月10日~16日】

今週読んだ本をまとめました!今週は7冊!

できるだけネタバレしないよう気をつけてはいますが、最低限のあらすじには触れつつ読後のテンションで感想を書いています。そのため、気になる本がある方は、読む際にご注意いただければと思います。

1.グリーンマイル 上・下 (スティーブン・キング)

あらすじ:大恐慌の嵐が吹き荒れる1932年のアメリカ南部、コールド・マウンテン刑務所の死刑囚舎房。刑務所内の電気椅子へと続く通路は、床に緑のリノリウムが張られていることから通称〈グリーン・マイル〉と呼ばれている。
 ここに、双子の少女を強姦殺害した罪で死刑が確定した黒人男性ジョン・コーフィが送られてくる。看守主任のポールは、横暴な新入り看守や、問題ばかり起こす兇悪な死刑囚への対応に日々追われる一方で、巨体ながら穏やかでいつもさめざめと泣いているコーフィに一抹の違和感を抱いていた。そんなある日、ポールはコーフィの起こしたある奇跡を目の当たりにしてしまう……。(小学館文庫より)

満足度  :5.0
読みやすさ:5.0(翻訳含め)

映画も大ヒットしたエンタメの帝王による不屈の名作!昔に見た映画もよかったのだが、原作である小説についてもやはり傑作だった。

映画の内容を思い出しつつ読み進め、新入り看守パーシーの問題行動に胃を痛めつつ、死刑執行のかなりグロテスクな描写に戦慄したりしながらも、展開とテンポの良さにスラスラと読み進められた。強姦殺人の真相が判明していく過程でのジョン・コーフィと主人公の関係の変化も感動的である。
大恐慌時代のアメリカ人の生活と社会に対する不安が、皮肉を込めて分かりやすく描写されているので読んでいて「ほへ~」と勉強になった。黒人に対する認識がドン引きするくらいひどく(犬と黒人は所有物というような発言があり)、そこも文化理解として読んでよかった。それと、尿路感染症の辛さについても、著者が経験したのか!?と思うほど圧巻の描写であった。
映画ではよく分からなかった心理描写や各登場人物の後日談など含め、面白いので読んで損はなし!

著者のまえがきで、数十ページにわたり当たり前のようにネタバレを食らわされるので、映画版も見ていないよ!という方は注意が必要。キング作品ではめずらしくホラーではないので、ホラーが苦手な方でも割と安心して読めそう。(考えられないくらい下品なセリフばかりだが、、)

2.桜風堂ものがたり 上・下 (村山 早紀)

あらすじ:書店に勤める青年、月原一整は、人づきあいは苦手だが、埋もれていた名作を見つけ出して光を当てることが多く、店長から「宝探しの月原」と呼ばれ、信頼されていた。しかしある日、店内で万引きをした少年を一整が追いかけたことが、思わぬ不幸な事態を招いてしまう。そのことで傷心を抱えて旅に出た一整は、ネットで親しくしていた、桜風堂という書店を営む老人を訪ねるため、桜野町を訪ねるのだが……。(PHP研究所より)

満足度  :3.5
読みやすさ:5.0

ストレスなく読み進められる癒し系小説という印象の作品。登場人物は基本的にスペックの高い美男美女で恋をしたりしなかったり。周囲の関係者も、主人公を無条件で応援してくれる優しい人しかいないので、若干現実味に欠ける気はするかな~とも思いつつ、プライベートな読書時間にストレスを受けたくねぇ!という読者にはお勧めできる。リアル書店について知れる職業小説的な話も書かれているので、噂通り現実世界の書店経営は厳しくなっているのだなーと、書店経営の仕事内容も含め勉強になった。

3. 小説 (野崎まど)

我々は、なぜ小説を読むのか。

五歳で読んだ『走れメロス』をきっかけに、内海集司の人生は小説にささげられることになった。
複雑な人間の昇華体であり、人の心を掴んで離さない、人の心が作り出した物語の結晶。
そこには望むもののすべてがあった。
十二歳になると、内海集司は小説の魅力を共有できる生涯の友・外崎真と出会う。二人は小説家が住んでいるというモジャ屋敷に潜り込む。
そこでは好きなだけ本を読んでいても怒られることはなく、小説家・髭先生は二人の小説世界をさらに豊かにしていく。
しかし、その屋敷にはある秘密があった。
小説を書くことで失われる世界の均衡、読むことで広がる無限の心。

宇宙最高の愉悦のすべてが、今明らかになる。(講談社より)

満足度  :5.0
読みやすさ:5.0

初っ端数ページ読んだけで感じるワクワク感。物語自体も幻想的で壮大なファンタジーを思わせるジャンル不明な面白さが198ページ内で描写されており、あっという間に読み終えたにもかかわらず読後の満足感が凄い。流石天才作家と呼ばれるだけある。

野崎まどの作品は初めて読んだが、この作品の満足度が高かったので、読後のテンションで他の野崎まど作品も購入してしまった。題名が「小説」なだけに、著者による小説とは何なのか、概念的にどうであるのかということを哲学的に記載されており、エントロピーと小説を結びつけた考え方は、小説好きにはかなり痺れる思う。超良い。
また、ジャンルという枠を学んでしまったことによって、小説執筆の熱量が損なわれるという話も興味深い。この作品自体がジャンル不明だと思うので、面白さはそのせいか!とも思いつつ。物語も面白く、哲学も興味深く、プロットもよく、読後感も最高!文句なし!読め!

4.阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし(阿佐ヶ谷姉妹)

40代・独身・女芸人の同居生活はちょっとした小競合いと人情味溢れるご近所づきあいが満載。エアコンの設定温度や布団の陣地で揉める一方、ご近所からの手作り餃子おすそわけに舌鼓。白髪染めや運動不足等の加齢事情を抱えつつもマイペースな日々が続くと思いきや――。地味な暮らしと不思議な家族愛漂う往復エッセイ。「その後の姉妹」対談も収録。(幻冬舎より)

満足度  :4.0
読みやすさ:5.0

芸人さんのエッセイは外れなし!阿佐ヶ谷姉妹の日常生活を姉妹交互に綴っていく構成で、とりあえず阿佐ヶ谷姉妹に血のつながりのない他人であるということにかなり驚いた。6畳一間の同居生活で、ある意味家族よりも長い時間一緒に過ごしている二人の日常風景に、もし自分が同じ生活をしていたら凄まじいストレスだろうなと感じつつも、その気の置けない関係が羨ましくもある。同居での日常風景や芸人の仕事、バイト先の話などは人の日記を見ているかのようだが、流石芸人だけあって文章自体もユーモアにあふれ、けれど下品でもないので読んでいて面白かった。

5.カフネ (阿部 暁子)

☆2025年本屋大賞受賞作☆【第8回未来屋小説大賞】【第1回あの本、読みました?大賞】一緒に生きよう。あなたがいると、きっとおいしい。やさしくも、せつない。この物語は、心にそっと寄り添ってくれる。最愛の弟が急死した。29歳の誕生日を祝ったばかりだった。姉の野宮薫子は遺志に従い弟の元恋人・小野寺せつなと会うことになる。無愛想なせつなに憤る薫子だったが、疲労がたたりその場で倒れてしまう。実は離婚をきっかけに荒んだ生活を送っていた薫子。家まで送り届けてくれたせつなに振る舞われたのは、それまでの彼女の態度からは想像もしなかったような優しい手料理だった。久しぶりの温かな食事に身体がほぐれていく。そんな薫子にせつなは家事代行サービス会社『カフネ』の仕事を手伝わないかと提案する。食べることは生きること。二人の「家事代行」が出会う人びとの暮らしを整え、そして心を救っていく。(講談社より)

今年の本屋大賞受賞作!話題作ということでご多分に漏れず読み始める。
家事代行「カフネ」を通して、主人公の立ち直りと弟の死の真相に迫っていく、優しさにあふれた傑作だった。

物語の展開はテンポよく、主人公である薫子とキャラの立っている登場人物たちとの交流は心理描写が手に取れるような上手さで描写されており、薫子の繊細な感情の揺らぎが伝わるよう。家事代行業の話だからこそ、世の中にはいろんな家庭環境があるんだな~と改めて思い、最近はそのような複雑な人間関係(多様性のような?)の小説が世間的に評判になるのかなと感じる。「汝、星のごとく」と系統が似ていたなという印象だった。主人公の薫子と、性格がまったく異なるせつなとの交流は、今描写を思い返してみてもじんわりと涙が出てくる。最後のシーンはとても良き。小説内で料理を作りまくる描写がでてくるが、それがどれも美味しそうで、自分も料理頑張らなきゃなと思わせてくる。

個人的には野崎まどの「小説」もかなり面白かったのだが、「カフネ」が本屋大賞受賞であるのも、まあ納得をせざるを得ない。

満足度  :5.0
読みやすさ:5.0

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